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環境DNA始めました
Jun 10, 2024
水の中には生物から排出されたDNAがたくさん含まれています。近年、このDNAからその場に生息している生物種を特定したり、ある生物の量を推定したりする手法(環境DNA)が河川生態学でブームとなっています。この手法のいいところは、生物を捕まえる必要がないため生物に与える影響が小さい(非侵襲的)点と現地調査にかかる労力が少ない点です。今年から琵琶湖流域で水温や流量と魚の分布との関係を調べるために私も環境DNAを始めました。化学分野の方々と三日かけて巡った行程は天気にも恵まれ、初夏らしい気持ちのいい調査でした。
川底の凹凸を表現する
May 16, 2024
川底の砂や石礫が積み重なることでできる凹凸や空隙は、水生昆虫類や藻類、魚類の重要な住みかとして機能しています。砂が卓越して石礫が埋没すると生物種数が少なくなる、逆に大きな石ばかりではサケなどが産卵できなくなるなど、凹凸を定量的に評価することは河川生態系の健全性を表す一つの指標となります。ただ、現地で川底の凹凸を測ろうと思うと、多大な労力と時間がかかることが課題でした。この凹凸を河川の粒度分布から推定する手法を前職場の宮川研究員(現リバフロ)が開発し、ダム工学会の技術開発賞を受賞され、私も共著として表彰を受けました。粒度分布から凹凸指標に定量化するツールは以下に公開されております。興味がある方はご覧ください。
ダム下流に土砂を流す
Oct 14, 2023
主著論文が受理されました。長野県天竜川水系小渋ダムに建造された土砂バイパストンネル(SBT)運用の効果を調べた研究になります。SBTはダム上流と下流をトンネルでつなぎ、洪水時にダム湖を迂回して下流に土砂と水を直接流すダム再生事業の一つです。この事業の効果として、ダム湖に貯まる土砂を減らすことで貯水容量を確保できること、ダム下流で不足しがちな小中サイズの土砂を供給できることが挙げられます。本研究では、ダム下流への土砂供給とそれによる河川生態系の変化を5年間おいました。計12回の運用によって、徐々にダム下流の河床環境と生物相はダムのない自然河川のものに近づいていきましたが、まだ回復途上でした。このことから長期的に運用を繰り返すことがダム下流生態系の再生に必須であることが分かりました。下記リンクで閲覧のみ可能です。
https://onlinelibrary.wiley.com/share/author/ZMXM25AEWSZ7CXWP4GUK?target=10.1111/rec.14049
森林河川が攪乱後の回復を支える
Sep 23, 2023
主著論文が公開されました。大学時代の研究で、北海道北部の川で雪解け洪水が水生昆虫に及ぼす影響とその後の移動をトビケラ一種の遺伝子から明らかにした研究になります。洪水によって、トビケラの個体数は流域内の農地が多い川ほど大きく減少しました。しかし、半年後にはほぼ洪水前と同じ個体数に回復しており、その個体は主に洪水の影響が小さかった森林河川から移動してきていることが分かりました。激甚化する気候変動下で、流域内の森林を維持・管理することが、流域全体での水生生物の保全に重要になります。以下のリンクで閲覧のみ可能です、論文pdfをご希望の方はお問合せ下さい。